動画から手順書を作るとき、AIは映像と音声の両方を手がかりに、字幕・手順の区切り・手順の本文を作ります。精度は、AIに渡す手がかりを増やすほど上がります。
この記事では、AIが既定で何を見て何を作っているかと、手がかりを足す4つの場所(専門用語集・作成ルール・動画の説明・撮影中の話し方)を、設定する範囲の広い順に説明します。
AIが既定で行っていること
何も設定せずに解析した場合も、AIは動画の映像と音声を両方読み取り、次のものを作ります。
| 作るもの | 何から作るか |
|---|---|
| 動作の字幕(AI生成) | 映像から作ります。手・工具・部品の動きを、動きが見えている時刻に合わせて字幕にします。話しているだけで手が動いていない場面では、話の要点を「〜を確認する」などの形で字幕にします |
| 発話の字幕(発話の文字起こし) | 音声から作ります。話した内容を、文の形を保ったまま書き言葉に整えて字幕にします。「えっと」などの言いよどみは除き、型番や固有名詞はそのまま残します。聞き取れない部分は推測で埋めず、字幕にしません |
| 手順の区切り | 映像と音声の両方から決めます。工具や作業の対象が変わる、手が部品から離れる、といった映像の切れ目と、「次に〜」「これで〜は完了です」といった話の変わり目を合わせて判断します(分割の粒度が[動作]のときは、動作ごとに区切ります) |
| 手順の本文 | 映像と音声の両方から書きます。その区間の動作に、話した指示・注意・数値を加えて、本文や作業のコツ・注意事項に入れます |
2種類の字幕は別々に作られ、手順書にするときの[手順化の設定]で、どちらを字幕として使うかを選びます。既定は[AI生成](動作の字幕)だけがONです。撮影中に話した内容を字幕に出したい場合は、[発話の文字起こし]にもチェックを入れます(下の「5. 手順書にするときに、使う字幕を選ぶ」)。
文字起こしは動画全体の文脈を踏まえて行います。ただし、社内だけで使う呼び名や型番の表記、映像に映らない数値や判断の基準は、映像と音声だけからは正しく読み取れません。これを補うのが、次の4つの場所です。
手がかりを足す4つの場所
| 場所 | 設定する単位 | 主に効くもの | プラン |
|---|---|---|---|
| 1. 専門用語集 | 全社で一度 | 用語の表記、手順の区切り | 用語の登録は Core, Pro, Enterprise |
| 2. 作成ルール(書き方) | 全社・拠点で一度 | 動作の字幕と本文の言い回し | Enterprise |
| 3. 動画の説明 | 動画ごと | 何の作業かの理解(字幕・区切り・本文) | すべてのプラン |
| 4. 撮影中の話し方 | 撮影のとき | 発話の字幕、手順の区切り、本文 | すべてのプラン |
上から順に、一度設定すれば以降のすべての解析に効くものから並べています。すべてを設定しなくても、1つだけでも効きます。
1. 専門用語集に、社内の言葉と現場の前提を登録する
サイドバーの[辞書・テンプレ]→[専門用語集]タブで設定します。全社で共通の内容を一度登録すれば、以降のAI解析に自動で反映され、動画ごとに入力する必要はありません。
用語
製品名・設備名・部品名・工程名など、社内での呼び名と正式な表記を登録します。AIは登録した用語を優先して認識し、その表記で字幕と本文に書きます。音の似た一般的な言葉と取り違えやすい用語や、型番のように聞き取りだけでは表記が決まらない用語ほど効果があります。
用語に「説明(読み・意味)」を添えると、認識の精度がさらに上がります。説明はAIが解析時に読むためのもので、翻訳には使われません。
業種テンプレートからの読み込みや、Excel/CSVでの一括登録もできます。詳しくは 専門用語集(用語と多言語対訳) をご覧ください。用語の登録は Core, Pro, Enterprise プランでご利用いただけます。
この現場について
同じタブの[この現場について]に、業種・事業・製品の概要・主な工程の種類を書きます。AIが動画を解析するときの前提として使われ、専門用語の解釈や手順の区切りの精度が上がります。全社で1つだけ設定します(編集はチーム管理者以上)。
2. 作成ルールの「書き方」で、言い回しをそろえる
[辞書・テンプレ]→[作成ルール]タブの[書き方]に、組織の言い回しや禁止事項を書いておくと、AIが作る文章がそれに従います。
- 動作の字幕(AI生成):書き方の言い回しと禁止事項に沿って書きます
- 手順の本文:AI処理オプションの[文章スタイル]で[方針に従う]を選ぶと、書き方で定めた言い回しと粒度で整えます
書き方は、話した内容や動作を正しく読み取るためのものではなく、読み取った内容を「どう書くか」をそろえるためのものです。内容は合っているのに言い回しが社内の書き方と違う、という場合に使います。なお、作成ルールの[規程]は公開前チェックでの照合に使われ、文章を作るときに効くのは[書き方]です。
作成ルールは Enterprise プランの機能です。詳しくは 手順書の書き方を定める(組織の言い回し・基準をAIに反映させる) と 手順書を作るときに従うものをまとめる(作成ルール) をご覧ください。
3. 動画の説明に、何の作業かを書く
アップロード時に開くAI処理オプションの[動画の説明]に、その動画が何の作業かを書きます。対象の設備、作業の目的、使う工具などを書くと、AIが映像を読み取る手がかりになります。
書くのはその動画に固有のことだけで構いません。全社に共通する用語や前提は専門用語集に任せます。たとえば次のように書きます。
対象設備:〇〇 主目的:〇〇の交換 使用工具:トルクレンチ 注意:〇〇は再使用しない
欄の右上のアイコンから、登録済みのテンプレートを挿入できます。項目の型をそろえておくと、書く人によって説明の量がばらつきません。作る前のAI相談(Core, Pro, Enterprise プラン)で決めた目的・読む人・含める範囲は、この欄へ自動で引き継がれます。
4. 撮影中に、作業に合わせて短く話す
撮影中に話した内容は、発話の字幕・手順の区切り・手順の本文に使われます。単語だけを言うよりも、作業に合わせた短い一文で話すほうが効果があります。単語だけでは何をどうするのかがつながらず、本文や区切りの手がかりになりにくいためです。長い説明は要りません。
| 話す内容 | 例 | 主に効くところ |
|---|---|---|
| これからやること | 「次に、カバーを外します」 | 手順の区切り(話の変わり目として使われます) |
| 部品・工具の名前 | 「〇〇を△△に差し込みます」 | 字幕と本文の表記 |
| 数値・合否の基準 | 「隙間が0.1mm以内なら問題ありません」 | 本文、作業のコツ・注意事項 |
| 注意点とその理由 | 「締めすぎると割れるので、手で止まるところまでにします」 | 本文、作業のコツ・注意事項 |
| ひと区切りの終わり | 「これで〇〇の取り付けは完了です」 | 手順の区切り |
撮影のときに気をつけること
- 話してから作業しても、作業しながら話しても構いません。動作の字幕の時刻は、話した時刻ではなく映像で動きが見えている時刻に合わせて付けます
- 機械音が大きい場所では、マイクを口元に近づけます。聞き取れない部分は字幕になりません
- 作業と関係のない会話が多いと、話の変わり目を手順の区切りの手がかりにできません
- 話す言語と、AI処理オプションの[詳細設定]にある[認識言語]を合わせます
- 解説をまったく入れずに撮った動画は、AI処理オプションで[解説音声が無い動画(映像だけで解析)]にチェックを入れます。手順の区切りが時間で機械的に等分されるのを防げます
撮影時に「ここは注意」などの合図を言っておくと、その言葉が話された手順にだけ設問を残すこともできます。詳しくは キーワードを言った手順だけ設問を残す(設問の絞り込み) をご覧ください。
5. 手順書にするときに、使う字幕を選ぶ
AI処理が終わった素材から手順書を作るとき、[手順化の設定]の[字幕]にある[字幕として採用する種類]で、手順書に入れる字幕を選びます。
| 選ぶもの | 字幕になる内容 | 向いている動画 |
|---|---|---|
| AI生成(既定でON) | 映像から読み取った動作の説明 | 作業を撮った動画、解説の少ない動画 |
| 発話の文字起こし(既定でOFF) | 撮影者・作業者が話した内容 | 話しながら撮った動画、講義や説明が主役の動画 |
| 両方 | 発話と動作の字幕を時間軸でまとめた1本の字幕 | 動作と解説の両方を見せたい動画 |
撮影中に話した内容を字幕として出したい場合は、[発話の文字起こし]にチェックを入れます。選んだ内容は記憶され、次に手順化の設定を開いたときの初期値になります。字幕のテキストは検索の対象になるため、発話の字幕を入れておくと、後から言葉で該当箇所を探せます。
字幕の種類は手順書を作るときに選ぶものです。作成後にもう一方の種類へまとめて入れ替えたい場合は、同じ素材からもう一度手順書を作成します。詳しくは 手順化の設定(読み上げ・字幕・設問・関連ファイル) をご覧ください。
解析結果を直す
- 字幕の文言は、動画エディターで直せます(字幕の編集)
- 同じ用語の聞き間違いが繰り返し出る場合は、その用語を専門用語集に登録してから、[AI解析結果を確認]→[AI再実行]で解析し直します。以降の解析でも、その表記で書かれます
- 条件を変えた結果を見比べたい場合は、素材をコピーしてから解析し直します(解析条件を変えて試す(素材をコピーして再解析する))
よくある質問
Q. 撮影中に何も話さなくても、手順書は作れますか。
A. 作れます。映像から動作の字幕・手順の区切り・本文を作ります。解説をまったく入れずに撮った動画は、[解説音声が無い動画(映像だけで解析)]にチェックを入れて解析してください。
Q. 話した言葉が字幕に出ません。
A. [手順化の設定]の[字幕として採用する種類]が、既定の[AI生成]だけになっている可能性があります。[発話の文字起こし]にチェックを入れ、同じ素材から手順書を作成し直してください。素材に発話のデータが無い場合は[(データなし)]と表示され、選べません。
Q. 単語だけを言うのでも効果はありますか。
A. 単語だけでは何をどうするのかがつながらないため、手順の区切りや本文の手がかりになりにくくなります。「次に〇〇を外します」のように、作業に合わせた短い一文で話してください。